1.移動等の円滑化の一層の促進

改正「バリアフリー法」の全面施行及び更なるバリアフリーの推進

 2006年に「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(平成6年法律第44号。通称「旧ハートビル法」)と「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(平成12年法律第68号。通称「旧交通バリアフリー法」)が統合・拡充され、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号。以下本章では「バリアフリー法」という。)が制定されて以来、10年以上が経過した。

 こうした中、2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会(以下本章では「東京2020大会」という。)を契機とした、共生社会の実現を目指し、全国における更なるバリアフリー化を推進するため、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(平成30年法律第32号)が2018年5月に成立し、2019年4月に全面施行を迎えた。

 さらに、2020年5月には、2018年12月の「ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律」(平成30年法律第100号)の公布・施行や東京2020大会を契機とした共生社会の実現に向けた機運の醸成等を受け、ハード対策に加え、移動等円滑化に係る「心のバリアフリー」の観点からの施策の充実などソフト対策を強化する「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(令和2年法律第28号)が2020年通常国会において成立し、2021年4月に全面施行を迎えた。本改正では、公共交通事業者等に対するソフト基準適合義務の創設、優先席・車椅子使用者用駐車施設等の適正な利用の推進、市町村等による「心のバリアフリー」の推進等の内容が盛り込まれている。

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第5章第1節 1.移動等の円滑化の一層の促進/国土交通省

TOPICS(トピックス)(16)

バリアフリーに係る制度・仕組みの見直し

 2017年3月に、障害当事者も参画する「バリアフリー法及び関連施策のあり方に関する検討会」を開催し、「バリアフリー法」及び関連施策の見直しについて議論を行った。

 2018年2月には、交通事業者によるハード対策・ソフト対策一体となった取組の推進、バリアフリーの街づくりに向けた地域における取組強化、「バリアフリー法」の適用対象の拡大、利用者へのバリアフリー情報の提供の推進等の措置を講ずること等を内容とした改正「バリアフリー法」が2018年5月に成立、2019年4月に全面施行された。

 さらに、2019年11月には第8回検討会を開催し、2018年12月の「ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律」の公布・施行や、東京2020大会を契機とした共生社会の実現に向けた機運の高まり等、バリアフリーを取り巻く新たな動きにより「心のバリアフリー」の重要性が益々高まっていることを受け、共生社会の実現に資するバリアフリー施策を推進するため、「心のバリアフリー」などソフト施策のあり方等について議論を行った。2020年1月には、第9回検討会を開催し、「バリアフリー法」及び関連施策のスパイラルアップに係る今後の対応策を「『バリアフリー法及び関連施策のあり方に関する検討会』2020報告書」として取りまとめ、本報告書に沿って具体の政策立案を速やかに行い、実行に移していくべきとした。

 そして、本報告書を踏まえ、公共交通事業者など施設設置管理者におけるソフト対策の取組強化、優先席・車椅子使用者用駐車施設等の適正な利用の推進、市町村等による「心のバリアフリー」の推進等の措置を講ずること等を内容とした、改正「バリアフリー法」が2020年5月に成立、2021年4月に全面施行された(改正法の概要は以下のとおり。)。


法律の概要

1.公共交通事業者など施設設置管理者におけるソフト対策の取組強化
○公共交通事業者等に対するソフト基準※遵守義務の創設(※スロープ板の適切な操作、明るさの確保等)
○公共交通機関の乗継円滑化のため、他の公共交通事業者等からのハード・ソフト(旅客支援、情報提供等)の移動等円滑化に関する協議への応諾義務を創設
○障害者等へのサービス提供について国が認定する観光施設(宿泊施設・飲食店等)の情報提供を促進
2.国民に向けた広報啓発の取組推進
(1)優先席、車椅子使用者用駐車施設等の適正な利用の推進
○国・地方公共団体・国民・施設設置管理者の責務等として、「車両の優先席、車椅子用駐車施設、障害者用トイレ等の適正な利用の推進」を追加
○公共交通事業者等に作成が義務付けられたハード・ソフト取組計画の記載項目に「上記施設の適正な利用の推進」等を追加
(2)市町村等による「心のバリアフリー」の推進(学校教育との連携等)(主務大臣に文科大臣を追加)
○目的規定、国が定める基本方針、市町村が定める移動等円滑化促進方針(マスタープラン)の記載事項や、基本構想に記載する事業メニューの一つとして、「心のバリアフリー」に関する事項を追加
○心のバリアフリーに関する「教育啓発特定事業」を含むハード・ソフト一体の基本構想について、作成経費を補助(※予算関連)
○バリアフリーの促進に関する地方公共団体への国の助言・指導等

【教育啓発特定事集のイメージ】
高齢者疑似体験
車椅子サポート体験
3.バリアフリー基準適合義務の対象拡大
公立小中学校及びバス等の旅客の乗降のための道路施設(旅客特定車両停留施設)を追加

資料:国土交通省

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